キャッシュフロー表のすすめ 7

 前回は給与所得と公的年金に係る雑所得について、所得額の計算方法を見てきました。
 これらのほかにも所得項目は数多くあり、事業所得、不動産所得、一時所得などはその主なものですが、生涯キャッシュフロー表の作成に必要になった段階で収入額といっしょに計算するほうが手順としてわかりやすいので、ここでは触れないことにします。

(2) 課税所得金額(税額控除前)の算定

①所得控除前の課税所得

 所得税トータルの課税所得額の算出は、(1)の各所得項目の所得額をたしあわせることから始めます。
 さきに見た例では、給与収入の500万円以外に収入がないとすると、給与所得の所得額356万円がそのまま課税所得額(ただし所得控除前)になります。もし、給与所得以外に収入があれば、その所得項目について所得金額を計算してこの356万円に加えます。ただしここでは、土地建物や株式等の譲渡所得、配当所得、退職所得など、総合課税の計算から切り離して計算する分離課税の所得項目は除かれます(回を改めて説明します)。

②所得控除後の課税所得

 所得控除前の課税所得を算出したら、次に所得控除を行って税率を掛けるもとになる所得控除後の課税所得を算出します。
 所得控除のうちキャッシュフロー表に組込んでおいた方がよいと思われるものは次のとおりです。
 a) 基礎控除
 b) 配偶者控除、扶養控除など
 c) 障害者控除
 d) 社会保険料控除
 e) 生命保険料控除、地震保険料控除
 f) 医療費控除

a) 基礎控除は、所得金額から一律で差し引くことができる控除です。合計所得のランクに応じ控除額が決められ、所得が高いほど控除額が少なくなっていきます。令和7(2025)年の所得に対し適用される控除額は、合計所得2,500万円以下を所得ランクで区切って決められています。2,500万円超は控除の対象になりません。さきの例では合計所得356万円とすると基礎控除の額は68万円となります。ただこの金額は恒常的なもとのされず、令和9年分以降は58万円となります。キャッシュフロー表ではこちらを使うとよいでしょう。
 基礎控除は最近の税制改正の対象になっていて、控除額の引上げ等が行われた令和7年分に続き令和8年分についても改正が行われる予定です。
 ここで、合計所得金額という言葉が出てきましたが、これは分離課税の所得も含めて計算された所得です。従って、分離課税の所得がある場合は、この段階では所得控除の金額を計算することはできません。説明が前後してしまいますが、記憶に留めておいてください。

b) これらは人的控除と総称され、本人や家族の状況に応じて所得から一定額を差し引くものです。
○配偶者控除
  配偶者控除は、配偶者の合計所得が58万円以下の場合に本人(=納税者)の所得を控除するものです。控除額は38万円(年末年齢70歳以上は48万円)です。本人の合計所得が900万円を超えると控除額が少なくなり、1,000万円超では控除がなくなります。
  配偶者の合計所得が58万円を超えると名前が配偶者特別控除に変わります。控除額は、配偶者の合計所得が95万円までは配偶者控除と同額(70歳以上の増額はなし)ですが、その増加と共に減少し133万円超になると控除対象外となります。本人の合計所得の要件は配偶者所得と同じです。
 
○扶養控除
  16歳以上(年末年齢。以下同じ)の扶養親族がある場合は、扶養控除の対象になります。本人(=納税者)と生計を一にしている(生活費の面倒を見ている)ことが必要ですが、必ずしも同居していなくてもかまいません。ただし、30歳以上70歳未満の扶養親族は国内居住者であることなどの条件が加わります。控除額は38万円です。
  扶養親族のうち、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)と老人扶養親族(70歳以上)の控除額は次の通りとなります。
  ・特定扶養控除 63万円  
  ・老人扶養控除 同居 58万円 別居 48万円
  扶養控除の適用対象となるのは合計所得が58万円以下の扶養親族です。特定扶養控除はこれを超えても、特定親族特別控除と名前が変わって適用対象となります。合計所得85万円までは特定扶養控除と同額ですが、その増加と共に減少し123万円超になると控除対象外となります。

 次回は、c)障害者控除から進めていきます。